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台風のせいで今日からもう夏休み。いやっふー!ということで友人にもらったお題を消化。30分クオリティ。

蝉が鳴いている。よくよく聞いてみて初めて思ったのだが蝉の鳴き声はザ行の音よりラ行の音の方が近い気がする。かといって蝉の声をジーではなくリーにしたら秋に鳴く虫の声になるんだけれども。
 
指に貼った絆創膏がかゆい。美術の時間に彫刻刀で切ってしまった。結構さっくりいったのを放置して彫刻刀を動かし続けていたら教師に怒られた。あのおばさん、ヒステリックで嫌なんだよな。

 足元に落ちていた石を軽く蹴る。大きすぎるのか、大して転がらなくて苛々した。もう一回、蹴ってみる。やっぱり大して転がらない。むきになって蹴ろうとしたところでざっという靴の底のゴムが地面を滑る音とともに石が飛んで行った。そのまま2回ほど撥ねて道の脇に入る。取りに行くのも馬鹿馬鹿しくて、溜息を吐いた。

「どした? 元気ないねえ」

 自分より多少低い位置で猫のような目が笑う。身長は大して違わないはずだが、猫背の所為で低くなる。の癖もっと身長が欲しいと言ってるんだからどうしようもない。まあ、本人が猫背を自覚しているだけましとしておこうか。

「……別に。ただおばさんのキンキンした声が耳に残ってるだけだよ」
「あー、あれはきつい。本人が自覚してないのは罪だねえ」

 声を出さずにけたけたと笑う。

「あ、あと西日がきつい」

 思い出したように付け加えた語にそいつが噴き出した。

「付け足したように言うなよ。おばさんのキンキン声なんかよりもっと身近だろうが」
「いや、慣れてるだけ分かりづらい。人間の体は慣れるようにできてるからな」
「あー、それは言えてる。あれだろ、電車の中とかでの香水の匂いとか」
「まあ、そうだけど。人前で言うなよ? 失礼だから」
「言わないよ。顔そむけて鼻押えるくらいはするけど」
「うっわ悪質」

 それくらいの嫌味は言って、というかやってもいいと思うけど。
 駅までの道のりを、笑う。全く、世の中ってのも捨てたもんじゃない。

「じゃー、夏休み明けかね、次に会うのは」
「お前、補修あるだろ。そん時に会うよ」
「あー残念。夏休み明けまで会えなかったら抱きついて俺の愛を表現してやろうと思ってたのに」
「いらねえよ気持ち悪い。……じゃな。ばてんなよ」
「お前こそ」

 手を軽く振って別れを惜しむ。さあ、地獄の夏休みの始まりだ。
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