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なんか非常に遅れてしまって一週間に一本とかそう言うレベルじゃなく月一になっててごめんなさい……!!

というわけで、非常に遅れてはしまいましたが、二回目のお題「禁忌を犯す花」配布元は前回と同じく、輝く空に向日葵の愛を(http://nanos.jp/hiragi777/)様より。

今回はTPFより清華ちゃんと遥さんに出張ってもらいました。 

readmoreよりどうぞ。


 開け放した窓から心地よい風が入ってきて、清華は微かに目を細めた。いつもいつも本部と寮との行き来の繰り返しで、外に出る時は仕事の時だけ、というのはなかなか気が滅入っていたのだ、と気づかされる。
「気持ちいいわねえ、清華ちゃん。春の終わりっていうか、初夏って感じで。でも暑くないのが最高」
「そうですね」
 久々にみる都会の平和な光景を目にして自分たちの立場の異常さに気付かされる。
 せかせかと足をすすめるサラリーマンに、友人たちとの買い物の途中だろうか、着飾った主婦の群れ。そしてちらほらと学生たちが各々の目的地に向かいながら談笑している。
 なるほどテロに浸食されていなければ世界はこんなに平和なのか。目に飛び込む風景の一々に瞠目する。
「清華ちゃん、危ないわよ、窓から首出さないで」
「はい」
 苦笑交じりに言われて、そんなに言われるほどだったかな、と清華は頭を掻いた。


 両手に紙袋、ビニール袋を抱えてデパート内を回る。今日買わなければならないものは買い終わったのだが、何となく、この騒がしい空間を離れられないでいる。清華ではなく、遥が。
「ねえねえ清華ちゃん、ちょっと来て」
「はい?」
 遥が手に取っているのは小さな木製の玩具のようなものだった。手のひらに乗せられたそれを見てほう、と息を吐く。
「ああ、可愛いですね」
「でしょう? メモスタンドなんだけど、こんな形してるとついついどうでもいいことに使っちゃいそう」
 かわいい、と頬を染める遥がなかなか新鮮で、清華はメモスタンドよりそちらに見入った。ん、と遥が視線を上げる。
「どうかしたの? 清華ちゃん」
「あ、いえ……それ、買うんですか?」
「んー、買わない。だって使えないもの」
 そうですか、と頷いて清華は荷物を持ち直した。たしかに、今の生活のままでは使うことを難しいだろう。基本的な連絡はすべてメールだし、最悪、一人一人勝手に行動しても生活に支障はない。納得して、そのまま雑貨屋を後にする。
 そのまま、ぶらりぶらりとデパート内を散策して、指に喰い込む袋の持ち手が気になり始めたころ、遥がふっと角を曲がった。見失わないように、慌てて清華も角を曲がる。その瞬間、ふっと甘いにおいが鼻をかすめた。
「清華ちゃん」と遥が花屋の前で手を振る。そこでやっと、清華はそれが花の臭いだと気が付いた。小走りに駆け寄って、遥の隣に立つ。
「清華ちゃん、ちょっとここ、寄ってもいい?」
「別にいいですけど」
 そう言って、関節に喰い込んだ荷物を足下におろす。ふう、と赤くなったそこに息を吹きかけて遥の方を窺えば、優しい眼差しで花を見つめる遥が目に入った。店員が何かを言うと、微かに笑って、「いい花」と呟く。そういえば、何故彼女はTPFなんかに入ったのだろうか。清華のように、テロリストに恨みがあるのだろうか。首を傾げつつ遥を見る。詮索をする気はないが、気になりはする。むう、と考え込んでいると遥が店から出てきた。
「ごめんね、つい見入っちゃって」
「あ、いえ、いいんですけど」
 気に入ったのはありましたか、と社交辞令のように聞くと、遥がブーゲンビリア、と言った。
「え?」
「ブーゲンビリア。知ってる? あの、花みたいに見えるところって葉っぱなんだって」
「へえ……」
 知っているも何もブーゲンビリアの姿かたちがまず思い浮かばない。それでも、会話を終わらせてはならない、と思いついたことを口に出す。
「気に入ったなら、買ってくればよかったじゃないですか」
「……帰りましょうか」
 え、と聞き返す間もなく歩き出した遥をあわてて追った。

 なにか、聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。エレベーターの操作パネルの前に陣取った遥の背中を見つめながら清華はさっきの出来事を反芻していた。
 もし、何か気に障ったことを言っていたのだとしたら、それはさっきの発言以外の何物でもない。ただ、どんな理由でかが分からない。清華の言ったのは、買い物に来る人間の思いそのままであるはずだ。分からない、と拳を固く握る。
「ねえ、清華ちゃん」
 駐車場に出たところで声をかけられる。薄暗いそこに、遥の声が良く通った。
「あなた、自分がもらってるお金について、どう思ってる?」
 質問の間も遥は足を止めることなく駐車場を横切り、車へと近づいていく。
「え、給料についてですか」
 そう、と車のドアをあけながら遥が頷いた。助手席に滑り込みながら清華が答える。
「……あまり、誇れるものではない、とは思ってますけど」
 おずおず答えると、遥がうん、と頷いた。そのまま車を発進させる。
「私はね、清華ちゃん」
 呼びかけに答えるように、まっすぐ前を向いた遥の横顔を見つめる。
「たとえ、いくらそれが正当な報酬であったとしても、私たちが受け取るお金は人を殺してもらってるものなの。だから、私たちはそのお金を娯楽的に使うべきではない、と思ってるわ。私は」
 ああだから、と清華は頷いた。だから遥はあの可愛らしいメモスタンドを「使えない」と言って、美しい花を「いらない」と言ったのだ。人を殺して得た代価で買うにはあまりにも軽すぎる、と遥は考えたのだろう。
「ただ、あくまでもこれは私の考えであって、ほかの人がどうしてようと関係が無い事だとは思う。だから、清華ちゃんがもらったお金をどう使おうと止めはしないわ。ただ、私の話も少しは覚えておいてねってだけ」
「……そうですか。良かった」
「え、なんで?」
「だって、遥さんいきなり歩き出しちゃったじゃないですか。だから何か怒らせちゃったのかって心配したんですよ」
「あ、ごめんなさい。だって、あんなところで言う訳にもいかないじゃない」
「ええ。だから良かった、って」
 遥が前を向いたまま笑う。
 その横顔を見つめて、清華もほっと息をついた。安心して、息を吐き出す。
 清華たちの属するTPFは、政府が作った組織にも関わらず非合法組織となっている。それは憲法違反だ何だというのもあるだろうし、日常的に殺人を犯す清華たちを法治国家が積極的に認めるわけには行かないと言う政治的判断でもあったのだろう。結局のところ、清華たちがこの国の禁忌であることに変わりはない。そのことを清華たち実行班が忘れていても、遥は忘れていなかった、それがどことなくつらい。たとえそれを遥が意識していなくとも。
 はあ、とため息をつく。目の前のことに対処するばかりではいけないのかもしれない。忘れてはいけないのだ、と心に刻む。それはきっと玲と同じように、自分にとって重要だ。もう自分はここから逃げるわけには行かないのだから。
 心地よい車の揺れに身をゆだねるように清華は目を閉ざした。

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長いですね!前回短かったのにあれー?何が言いたいかわかりませんが、とりあえず遥さんはお給料の中身までも考える人だってことです。ちなみにこの設定は或鎖さんとの会話中に生まれました。ありがとう!
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